【FP監修】出産費用はいくらかかる?補助金はあるの?
妊娠が判明すると嬉しい気持ちがあふれる一方、同時にお金の不安が頭をよぎります。しかし、心配しすぎる必要はありません。なぜなら、健康保険からまとまった一時金がもらえるため、ママが心配するほど出産費用はかからないかもしれないからです。出産育児一時金のことを知り、出産費用に正しく備えましょう。
前野 彩
FPオフィスwill代表。株式会社Cras代表取締役
CFP®認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士。もと中学・高校の養護教諭という異色のFP。結婚・加入保険会社の破たん、マイホームの購入を機に、2001年FPに転職。現在は、子育て世帯の家計相談に力を注ぐ。近書に「教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール」(日経BP社)があり、11月13日には新著「本気で家計を変えたいあなたへ<第4版> ~書き込むお金のワークブック~」(日本経済新聞出版社)を発売。
「出産育児一時金」で、一児につき50万円がもらえる
健康保険からの手厚い出産育児一時金
妊娠がわかって嬉しさがあふれる一方、出産には何十万円もかかるという話を聞いて不安になっているママもいるのではないでしょうか。しかし、焦らなくても大丈夫。出産費用には公的な補助があり、ママが全額を負担する必要はないからです。
出産すると、健康保険から一児につき50万円の「出産育児一時金」がもらえます。会社員ママや派遣ママなど、自分で健康保険料を払っている場合は、自分が加入している健康保険から受け取り、パパの扶養に入っているパートや主婦のママの場合は、パパが加入している健康保険から受け取ります。
なお、出産育児一時金の対象となるのは、妊娠85日(12週1日)以後の出産(死産・流産・人工妊娠中絶含む)ですが、産科医療補償制度(※1)に加入していない医療機関で出産した場合や妊娠22週未満の出産では一時金は48.8万円となります。
(※1)産科医療補償制度…出産時に重度脳性まひになった赤ちゃんとその家族の経済的負担を補償する制度。分娩を取り扱う医療機関等が加入する。
双子なら100万円がもらえる
出産育児一時金は一児につき50万円なので、多胎児の出産であれば人数分受け取ることができます。つまり、双子であれば50万円×2児=100万円がもらえるということです。思いがけず多胎妊娠が判明したママにとって、心強いサポートとなる制度です。
自己負担があることも
分娩・入院にかかる費用は地域や医療機関によって差がありますが、入院日数が短く、比較的費用を抑えられる自然分娩でも、50万円以上かかることがあります。
最近では、無痛分娩や水中出産など、ママの希望に合わせてさまざまな出産スタイルを選択できるようになってきました。出産方法にこだわると、その分出産費用も高くなる傾向があります。医療機関では、出産にかかる費用の目安を事前に教えてもらえるので、しっかり確認しておくと安心です。
退院時の支払いの負担を軽減
「直接支払制度」なら病院での簡単な手続きだけでOK
出産育児一時金の受取方式は3種類ありますが、一番メジャーなのが「直接支払制度」です。
医療機関の窓口で直接支払制度の同意書をもらい、必要事項を記入して提出します。そうすれば、出産後に健康保険から病院へ直接、出産育児一時金が支払われるから、ママは退院時に、出産育児一時金を超えた金額だけを支払えば済むのです。手続きが簡単なうえ、窓口で負担する金額が少なくなるのが直接支払制度のメリットです。
コラム
ほかにもある出産一時金の受け取り方法
●受取代理制度
受取代理制度は、直接支払制度を導入していない小規模な医療機関で採用されている方式です。直接支払制度と同じように、出産育児一時金が健康保険から医療機関に支払われます。この方式でも、ママは出産育児一時金を超えた金額だけを支払えばOK。ただし、自分で健康保険に出産育児一時金の申請手続きを行う必要があります。出産予定日の1〜2ヶ月ほど前に事前申請が必要で、申請書には医療機関に記入してもらう欄もあります。不明な点は健康保険の窓口や医療機関に問い合わせて、早めに準備しておきましょう。
●産後申請方式
産後申請方式では、産後に健康保険から出産育児一時金をまとめて受け取ることができます。直接支払制度や受取代理制度を導入している医療機関でも産後申請方式を選ぶことができます。あとから出産育児一時金はもらえるものの、一旦は出産費用を全額負担する必要があるため、メリットとしては、例えばクレジットカード払いができる医療機関で出産費用を支払うことで受けられるポイント還元といえそうです。
この記事のまとめ
自分で準備が必要な出産費用の目安を知っておこう
出産すると、健康保険から出産育児一時金50万円というまとまった金額をサポートしてもらえます。しかし、それだけでは出産費用をカバーしきれないこともあります。自分が望む出産方法や医療機関では、いくらくらいかかるのか事前に調べて、カバーしきれない分はしっかりと準備しておきましょう。お金の不安を解消して、安心して出産に臨みたいですね。
- 構成・文/
- 永井 志樹子
- イラスト/
- 深川 優