【助産師監修】自然分娩・無痛分娩・帝王切開 何が違うの?出産方法まるわかり辞典
出産にはいろいろなスタイルがあります。「出産方法」の選択肢があることを知り、自分に合う方法を選べるといいですね。どんな方法があるのか、それぞれの特徴などを助産師の柳村直子さんに伺いました。
助産師
柳村直子さん
日本赤十字社医療センター
周産期外来 看護師長
助産師になって20年。NICU・GCU、産後ユニット、MFICU、分娩室、看護部を経験し、現在は周産期外来で妊婦さんや産後のお母さんや赤ちゃん・子どもたちと接している。
自然のタイミングを待つ「自然分娩」
陣痛が来るのを待ち、分娩も自然の流れで
陣痛から分娩まで、自然にまかせてタイミングを待つ出産方法を「自然分娩」といいます。日本では最もポピュラーな方法です。陣痛が始まったら産院へ連絡。陣痛間隔を計りながらしばらくは自宅で過ごし、ある程度の間隔になったら、産院に行きます。陣痛が進み、子宮口が全部開いたら分娩へ。助産師などのサポートを受け、陣痛の波とタイミングを合わせながら、赤ちゃんを出産します。
自然分娩のバリエーション
一口に「自然分娩」といっても、いろいろな方法があります。一般的に陣痛中は陣痛室で過ごし、子宮口が開いたら分娩室へと移動しますが、「LDR室での出産」は、陣痛から分娩、その後の回復までを同じ部屋で過ごせます。また、痛みを緩和する出産として、陣痛中や分娩の姿勢を妊婦さんが自由にできる「フリースタイル分娩」、イメトレや呼吸法でお産の痛みや不安を和らげる「ソフロロジー分娩」、湯温と浮力でリラックスできる「水中分娩」があります。
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陣痛誘発剤を使った場合も「自然分娩」
予定日を大幅に過ぎたのになかなか陣痛が来なかったり、おなかの赤ちゃんの元気がなくなってきたりしたら、陣痛誘発剤を使って陣痛を起こすことがあります。陣痛誘発剤を使うと「自然分娩」ではなくなるのでは?と勘違いする人がいますが、陣痛誘発剤を使っても「自然分娩」に変わりはありません。最初のきっかけをちょっと薬に手伝ってもらうだけで、あとの流れは変わりません。
麻酔で痛みを軽減する「無痛分娩」
計画無痛分娩と陣痛後に無痛にする2つがある
麻酔で陣痛の痛みを軽減するお産を「無痛分娩」といいます。痛みに対して不安が強い人、持病があるなどで陣痛に耐えるのが難しそうな人、里帰りをしないなどで体力を温存したい人などが選んでいます。事前に分娩日を決めて、陣痛誘発剤で陣痛を起こして出産する「計画無痛分娩」と、お産のタイミングは赤ちゃんに任せる「自然陣痛を待ってからの無痛分娩」の2パターンがあります。
費用は高いが、体力が温存できる利点あり
無痛分娩は背中のチューブから麻酔を入れる硬膜外麻酔が主流です。そのために設備や医療スタッフの充実などが必要で、どこの産院でもできるわけではありません。また、その分、出産費用が高くなります。ただ、痛みを感じないのはメリット大。局所麻酔で意識はあるので、赤ちゃんがママのおなかから出てくる感覚はわかるし、出産の瞬間の感動は同じです。また、心身の疲労が少なく、産後に体力を温存できます。なお、麻酔の効き方には個人差がありますが、陣痛中や分娩の途中でも麻酔医が痛みの感じ方を確認しながら麻酔をかけます。
開腹して赤ちゃんを産む「帝王切開」
「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」がある
おなかの赤ちゃんや妊婦さんに、経膣分娩が困難な状況があるため、開腹して赤ちゃんを誕生させるのが「帝王切開」です。逆子や双子以上の多胎妊娠、前置胎盤などの場合は、あらかじめ手術日を決める「予定帝王切開」に。自然分娩や無痛分娩の予定で、陣痛が来てお産が進む中で、回旋異常や胎児の心拍数の異常、臍帯脱出などのトラブルが起きて、赤ちゃんをすぐに出産したほうがよいけど経膣分娩が難しい場合は「緊急帝王切開」となります。
コラム
「予定帝王切開」になるのは
逆子、多胎妊娠、前回帝王切開や子宮の手術をしたことがある、前置胎盤、低置胎盤など
「緊急帝王切開」になるのは
分娩停止、胎児心拍異常、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離など
リスクがあるお産をより安全に進めるための方法
「自然分娩」や「無痛分娩」を望んでいた人の中には、「帝王切開」になったことを悔やむ人もいます。しかし、1番大切なのは、赤ちゃんとママの命を守ること。より安全なお産にするために必要な方法なのだと心得てください。お産のリスク軽減のため、「帝王切開」となる割合は増えていて、現在は4人に1人が帝王切開によるお産です。帝王切開も経膣分娩も、どちらも立派なお産です。
1人目が帝王切開でも、2人目以降のお産で経膣分娩できることもある
よく、1人目が帝王切開だと、それ以降のお産は帝王切開になると聞きますが、それが全てではありません。実際、1人目が帝王切開だったけれど、2人目は自然分娩ができる人もいます。2人目以降のお産が経膣分娩になるかどうかは、産院の方針や、おなかの赤ちゃんの体位、大きさ、子宮の状態などで決まります。希望する場合はかかりつけの産院に聞いてみましょう。
この記事のまとめ
いろいろなお産、ベストなのは人それぞれ
出産にはいろいろな方法があり、人によってベストな出産方法は異なります。人はひとりひとり価値観が違うのだから、「この方法が良いよ」と人にすすめるものでもありません。また、予めこう産みたいと思っていても、お産当日の流れで変わることもよくあります。もしそうなっても、その状況を受け入れて、赤ちゃんとの対面を楽しみにしたいですね。
みんなの体験記の監修記事
- 構成・文/
- 江頭恵子
- イラスト/
- 松木祐子